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マイクロステッピング:高精度かつ滑らかな動作を実現する鍵

著者:Cindy Chang(アプリケーション・エンジニア )Tea Tran(アプリケーション・エンジニア)

ステッピングモータは、モーションコントロールにおいて重要な構成要素であり、産業用オートメーション、ロボット工学、医療機器などの分野で広く利用されています。これらは、精密なモーションコントロールを実現するための主要技術の一つです。

高精度なモーション制御において、滑らかな動作と高分解能の位置決めは不可欠な要件です。滑らかな動作では、動作中の振動抑制と速度の平滑化が重視される一方、高分解能の位置決めでは、静止時の位置決め精度と微小な変位を検出する能力が重視されます。

本記事では、ADI Trinamicのソリューションに基づき、ステッピングモータの動作原理について詳しく解説します。また、フルステップ、ハーフステップ、マイクロステップの各モードにおける性能の違いを比較し、産業分野におけるモータ駆動・制御技術の幅広い応用例を紹介します。

概要

モーション・コントロールのアプリケーションの中には、非常に高い精度が求められるものがあります。そうしたアプリケーションでは、滑らかな動きと高い分解能での位置決めを実現しなければなりません。そのために不可欠な要素がステッピング・モータ(ステッパ・モータ)です。ただ、求められる要件を満たすためには、ステッピング・モータに適用する制御方式が重要になります。特に、フルステッピング制御、ハーフステッピング制御、マイクロステッピング制御の違いを把握しておくことが肝要です。本稿では、まずマイクロステッピング制御の基本を押さえた上で、フルステッピング、ハーフステッピングとの違いを明らかにします。また、マイクロステッピング制御を利用するために最適な製品群などを紹介します。

はじめに

ステッピング・モータを使用する場合、比較的シンプルな制御

方式によって高い精度を得ることができます。そのため、産業分野や医療分野のアプリケーションなどで広く利用されています。例えば、3DプリンタやCNC工作機械(Computer Numerical Control Machine)など、3 軸の位置決めを必要とするシステムが代表的な用途です。

ACモータやブラシレスDCモータでも、高い精度は得られます。ただ、ステッピング・モータには、精度が高いだけではなく、オープンループ制御による動作が可能で、低速でも高いトルクが得られるという長所があります。また、多くのステッピング・モータは費用対効果が高いものだと言えます。しかも、サーボ・モータほど複雑ではありません。更に、ブラシ付きDC モータとは異なり、ステッピング・モータでは大きなトルクによって位置を保持することができます。


本稿で取り上げるマイクロステッピングは、ステッピング・モータで使用される非常に有用な制御方式です。これを利用すれば、モータをより小刻みに(より細かいステップで)動かすことができます。つまり、1回転当たりの離散的な位置の数を大幅に増やすことが可能です。その結果、モータからの騒音や振動を大幅に低減できるようになります。

なお、アナログ・デバイセズは、モーション・コントロール用の製品群として「ADI Trinamic」を提供しています。ADI Trinamicには、ステッピング・モータ用のドライバIC や、ボード・レベルのモジュール、最大256 のマイクロステップでステッピング・モータを駆動するための完全なソリューションが含まれています。

ステッピング・モータの基本

まずは、ステッピング・モータに関する基本的な事柄について説明します。

モータの構造

ステッピング・モータは、磁石をベースとするロータとコイルをベースとするステータで構成されます。図1に示したのは、ハイブリッド2 相ステッピング・モータの例です。この種のモータでは、2 つの磁石カップを備えるロータを使用します。通常、各磁石カップには50 個の歯が付いています。また、これらの磁石は逆の極性を示し、物理的には互いにオフセットされています。ステータは、中央のロータを囲むよう複数の位置に配置された2つのワイヤ製コイルで構成されます。各相に順に通電することにより、モータが回転します。

   

                         (a)                                         (b)

1. ハイブリッド型ステッピング・モータの構造a)は8 極のステータ、b)は永久磁石をベースとするロータです。(出典: Analog Devices Inc.)

動作

ステッピング・モータの動作は、離散的なものになります。つまり、1回転に相当する角度(360°)を等間隔のステップに分割し、そのステップを単位として回転します。例えば、1回転当たり200 の離散的な位置を備えるステッピング・モータの場合、そのステップ角は1.8°となります。ステップ角は、以下の1に示すように、360°をフルステップの数で割ることによって求められます。

2に示すように、モータのコイルに電流を流すと、永久磁石をベースとするロータを引き寄せたり反発したりする磁界が生じます。この磁界に応じてロータが回転します。モータを回転させ続けるためには、各コイルに交互に通電し、磁界がロータの前方にある状態を維持する必要があります。

(出典: Analog Devices Inc.)

ステッピング動作の詳細

ここからは、ステッピング・モータのステッピング動作について詳しく説明していきます。それに向けて、図3に示した2 相ステッピング・モータのモデルを例にとることにします。このモデルは1つの磁極対を備えていますが、全体としては簡略化されたものになっています。

3. 2 相ステッピング・モータの簡略化されたモデル。永久磁石をベースとするロータを備えています。

 

フルステッピング制御

フルステッピング制御では、ドライバによって2 つのコイルに正または負の電流を流します。両方の相が同時に通電するので、最大のトルクが得られます。モータのシャフトは、コイルに流す電流の向きを切り替えることによって回転します。切り替えのパターンは、多くの場合、転流(commutation)と呼ばれ、通常は図4に示すような周期的なシーケンスに従います。この制御方式では、以下の4 つの状態が存在することになります。

フルステッピング制御を採用すれば、高精度のステップ、正確な速度制御、高い保持トルクholding torqueを実現できます。また、フルステッピングでは、モータの高速動作時に最大のトルク出力を得ることが可能です。しかし、フルステッピング制御では、図5に示すような問題が起きる可能性があります。つまり、モータの動作に伴って過剰な振動や大きな騒音が発生するかもしれないのです。この振動と騒音は、主にモータが目標の位置からオーバーシュートしてしまうことが原因で生じます。このオーバーシュートはポジション・ジャンプ(position  jumpと呼ばれています。振動や騒音が生じた結果、特定の速度で大きな共振が発生し、それに伴ってトルクが低下します。

単一の磁極対を備えるシンプルなモータでは、フルステップの転流を使用することで、1回転当たり4 つの離散的な位置を得ることができます。これを50 の磁極対を備えるモータに拡張すると、1回転当たりのフルステップ数は200になります(以下参照)。

このような構成により、ロータの歯とコイルの磁界が揃ったときにモータを特定の位置に向けることが可能になります。

ハーフステッピング制御

ステップのサイズを小さくすれば、位置のオーバーシュート、振動、騒音の問題を改善できます。では、ステップのサイズを小さくするにはどうすればよいのでしょうか。これは、新たな電流の状態を導入することによって実現できます(図6)。ハーフステッピング制御のモデルでは、ロータの位置の数を1磁極対当たり8つに増やします。それにより、位置の分解能が2 倍になります。ハーフステップの動作は、モータ用のドライバによって、1相励磁と2 相励磁を交互に実行することで実現できます。

上記のとおり、ハーフステッピング制御では、振動を抑えつつ位置の分解能を高められます。低速における回転トルクはわずかに増大しますが、新たなハーフステップの位置における保持トルクは低下します。その低下したトルクは、一般に増分トルク

incremental torqueと呼ばれています。

上記のような改善が得られるものの、ハーフステッピング制御には問題がないというわけではありません。同制御を適用したとしても、依然として比較的大きなポジション・ジャンプが生じて

しまうからです。これは、モータの回転が完全に滑らかに行われるわけではないということを意味します。この問題は、特に低速な動作において顕著になります。その結果、求められるように

なったのが、マイクロステッピング制御という技術です。

マイクロステッピング制御とは何か?

マイクロステッピングは、上述した課題を解決する制御方式で

す。この方式では、各フルステップを等間隔のマイクロステップに分割します。そして、ステッピング・モータがマイクロステップを単位として動作するようにします。つまり、フルステップの間の複数の中間位置まで回転できるように制御するということです。そのためには、図7 のような構成を使用します。通常、この方式は、低速動作時により高い位置分解能とより滑らかな回転を得るために使用されます。マイクロステップの分解能を高めると

(より細かく分割すると、モータの移動距離が短くなります。その結果、位置のオーバーシュートとリンギングが低減され、振動と騒音が改善されます。

 

マイクロステッピング制御の仕組み

8に示すように、マイクロステッピング制御はモータに正弦波形の電流を供給することによって実現します。モータ用のド

ライバは、電流のレギュレーションを利用し、各モータ・コイルに対して正弦波形の電流を正確に供給します。とはいえ、完全な正弦波を生成するのは不可能です。正弦波の質、つまりマイクロステッピング制御の質は、ステッピング・モータ用のドライバが備えるA/Dコンバータ(ADC)とD/A コンバータDAC)の分解能によって制限されます。ADI Trinamicに含まれる各ステッピング・モータ用ドライバは、分解能が最小でも8ビットのADCDACを搭載しています。そのため、1フルステップに対して最大256 のマイクロステップを設定することが可能です。

通常、ハイブリッド型のステッピング・モータでは1回転当たりのフルステップの数が200 です。したがって、256 マイクロス

テップの制御を適用すると、1回転当たり最大5 1200 の離散的な位置を実現できます。その結果、0.00703125°という極めて高いステップ分解能が得られます。

8. 各ステッピング制御における電流波形。

位置のオーバーシュート/リンギングの様子も示しました。

考慮すべき重要な事柄 - 位置精度と増分トルク

マイクロステッピングを採用すれば、多くのメリットが得られます。しかし、この制御方式にも重要な課題が存在します。課題になるのは、位置精度と増分トルクの2 つです。

位置精度とは、モーターの実際の位置と指示された位置との差分(誤差)のことを指します。マイクロステッピング制御では、離散的な位置が増えるため位置分解能が向上します。しかし、位置精度も向上するわけではありません。他の制御方式を使用する場合と変わらず、モーターの精度は構造の公差、モーターの負荷、ドライバがモーターのコイルに所望の電流レベルを正確に供給する能力によって左右されます。これらの要因は、フルステッピングかマイクロステッピングかにかかわらず、モーターの精度に影響を及ぼすということです。

増分トルクは、モーターが停止しているときに、モーターをその位置から引き離すために必要なトルクの大きさとして定義されます。フルステッピングを使用する場合、磁石をベースとするロータはモーターのコイルに対してぴったりと揃っています。その場合、モーターの仕様として規定された保持トルクに等しい最大保持トルクが生成されます。それに対し、マイクロステッピングを使用する場合には、モーターが保持されているマイクロステップの位置に応じて増分トルクが低下します。

増分トルクの大きさは以下に示す式によって近似できます。

ここで、各変数の意味は以下のとおりです。

TINCNmを単位とする増分トルク

・THOLDNm を単位とするフルステップの保持トルク

・ SDR:ステップ分割比または式(5を約分した分数の分母

上記のSDRの説明にある式(5は以下のようなものです。

増分トルクについては、いくつかの具体的な例を見ていただくほうがわかりやすいでしょう。例として、256 のマイクロステップを使用するモーターがハーフステップの位置で停止しているケースを考えます。つまり、式(5)については以下のようになります。

 

SDRの値は、約分した分数の分母の値です。つまり、この例では 2になります。この場合、以下に示すように、増分トルクはモーターの保持トルクの70.709% に低下します。

 

もう1つの例として、モーターが7/256 マイクロステップの位置で停止しているケースを考えます。その場合、以下の式が成り立ちます。

この場合のSDR256 です。そのため、以下に示すように、増分トルクはモーターの保持トルクの0.61% まで低下します。

1に、SDR と増分トルクの関係をまとめました。

増分トルクは、各マイクロステップの位置でモーターを保持するために利用できるトルクを低下させます。ただ、回転トルクはほとんどその影響を受けないという点が重要です。つまり、モーターが回転している間、増分トルクの低下の影響は顕在化しません。実用的な観点から言えば、高い保持トルクが必要な場合には、モーターがフルステップまたはハーフステップの位置で停止するように制御する必要があります。

1. 増分トルクとSDR の関係

マイクロステッピングを適用すべきアプリケーション

ステッピング・モータを使用する多くのアプリケーションは、制御方式としてマイクロステッピングを採用することでメリットを享受しています。例えば、3Dプリンタで高品質のプリントを行うためには、位置分解能を高めつつ振動を最小限に抑える必要があります。また、医療用イメージング機器や手術用のロボットでは、患者にとっての快適さと安全性を確保しなければなりません。そのためには、静かな動作と正確な位置決めを実現する必要があります。マイクロステッピングは、こうした要件を満たすために最適な技術です。

マイクロステッピングでは、ステップのサイズが小さくなるので、位置のオーバーシュートが大幅に低減されます。それにより、振動の減少、効率の向上、より滑らかな動きといった多くのメリットが得られます。特に、機械的な振動が発生するとエネルギーが無駄に消費されます。CNC対応のフライス盤のような一部のアプリケーションでは、振動によって摩耗が進んで信頼性が低下します。マイクロステッピングを採用すれば、機械的な振動や騒音を低減できます。その結果、モーター制御システムの動作に関連する無駄なコストやエネルギーが削減されます。

マイクロステッピングは、上述した以外のアプリケーションでも利用されています。例えば、医療分野で使われる研究用の機器や、バルブ制御システム、エア・ポンプ、CCTVClosed-circuit Television、ロボット、ファクトリ・オートメーションFA機器などが挙げられます。

ADI Trinamicが提供する製品/技術

ADI Trinamicのソリューションにはステッピング・モータ製品が含まれています。それらの製品は、マイクロステッピング制御の実装に役立つ様々な機能を提供します。ADI Trinamicのすべてのステッピング・モータ製品は、最大256 マイクロステップに対応する制御機能を標準機能として搭載しています。

また、ADI Trinamic の中には、MicroPlyerTM 技術を採用したデバイスも存在します。MicroPlyer は、マイクロステップを利用するための補間技術(インターポレータ)です。同技術を使用すれば、既存のアプリケーションにおいても、分解能の高いマイクロステップを簡単に利用できるようになります。

更に、ADI  Trinamicの製品群には、効率が高くフットプリントが小さい完全なソリューションも含まれています。それらのデバイスを採用すれば、スペースと性能に関するあらゆる要件に対応できます。また、ステッピング・モータを使用するアプリケーションの複雑さが軽減されます。そのため、製品/アプリケーションを市場に投入するまでの時間を短縮することが可能になります。

 

MicroPlyer - マイクロステップ向けの補間技術

256 マイクロステップという分解能は、一部のメーカーが提供するステッパ用ドライバの能力を超えている可能性があります。 ADI Trinamic MicroPlyer は、この問題を解消する技術です。同技術を利用すれば、ステップ分解能の低いシステムを256 マイクロステップのシステムにアップグレードすることができます。その際、モーション・コントロール用のロジックを変更する必要はありません。

MicroPlyer は、位置と速度を維持したまま、ステップ・パルス間に追加の電流ステップを組み込む形で機能します。このユニットは、前のステップ期間の時間間隔を測定し、その時間を等しく分割することにより、ステップ・パルス間の時間を補間します。それにより、モータの駆動に使用される256 マイクロステップの内部信号(STEP信号)が生成されます。その結果、分解能の低いステップ信号が入力されている場合でも、256 マイクロステップの滑らかな出力が得られます。

9. マイクロステップ用の補間機能を提供するMicroPlyer

この例では、フルステップから16 マイクロステップへの補間を実施しています。

ADI  Trinamicのステッピング・モータ用ドライバは、既存のアプリケーションに対するドロップイン置換に最適なソリューションです。例えば、16 マイクロステップのドライバとシステムをアップグレードし、256 マイクロステップのより滑らかな動きを実現したいというニーズがあったとします。モータのステップ角が1.8°で所望の速度が10回転/秒RPSであるとすると、 16 マイクロステップを使用する場合の入力STEP信号は32kHzに設定する必要があります。通常、256 マイクロステップに対応する200フルステップのモータの場合、10RPSの回転を実現するためには512kHz の信号周波数が必要になります。この周波数は、一部のホスト・コントローラやマイクロコントローラにとっては高すぎる可能性があります。MicroPlyer をサポートするADI Trinamic のドライバを使用すれば、このようなケースに対応できます。そのドライバをドロップインすれば、STEP 信号の周波数32kHzのままで構わないからです。ADI  Trinamicのドライバは、STEP信号の補間処理を行います。図9に示すように、256マイクロステップを使用して動きを生成します。

 

ステッピング・モータ用の

スマートなドライバとコントローラ

アナログ・デバイスは、ステッピング・モータ用のスマートなドライバICとして「TMC2240」を提供しています。最大電圧は 36V、出力電流は2Armsで、S/DStep/DirectionインターフェースとSPISerial  Peripheral  Interfaceをサポートしています。一方、「TMC5240」はステッピング・モータ用のスマートなドライバ/コントローラIC です。この製品も最大電圧は 36V、出力電流は2Arms です。

TMC2240TMC5240は、2 相ステッピング・モータをターゲットとした製品です。256 マイクロステップに対応するステッピング・モータ用の高度なドライバとして機能します。シリアル通信インターフェースとしては、SPI UAR TUniversal Asynchronous Receiver/Transmitterをサポートしています。また、多様な診断機能や、MicroPlyer 技術によるマイクロステップの補間機能を備えています。更に、インデクサindexer

能や、完全に統合された2 つのHブリッジ(最大電圧は36V、最大電流は3.0A)、電力散逸の生じない電流検出(ICS)機能も統合されています。

TMC2240TMC5240は、クラス最高レベルのモーション・コントロール機能と電流制御機能を提供します。ADI  Trinamicならではの完全な機能セットを採用しているので、滑らかで静かなステッピング・モータの動作を実現可能です。例えば、 CoolStepTM は電力効率を向上するために使用されています。また、StallGuard2TM/StallGuard4TM によって、センサーを使用することなく、負荷とストールを検出できるようになっています。加えて、StealthChop2は静音動作を実現し、SpreadCycleTMはリップルを低減する形で電流制御を実現します。更に、 SpreadCycleStealthChop2 で実現されるチョッパ動作により、SpreadCycleStealthChop2を自動的に切り替え、広範な速度にわたって騒音を最小限に抑えることが可能になっています。StealthChop2 のチョッパ動作は、ADI  Trinamicの洗練された機能です。これを使用することにより、最大の効率と最高のモータ・トルクを両立しつつ騒音のない動作を実現することができます。

TMC5240cDriverTM 技術を適用したICであり、モーション・コントローラ機能も統合されています。そのため、一般的なモータ用ドライバを使用する場合と比べて、システムのアーキテクチャが簡素化されます。同IC が内蔵する8 点モーション・ランプ機能を使えば、所望の位置と動きのプロファイルをプログラムすることも可能です。それにより、ジャークを最小限に抑えられるだけでなく、必要な計算をホスト・コントローラからオフロードすることもできます。

これらの製品は、短絡保護や過電流保護の機能、サーマル・シャットダウン機能、低電圧ロックアウト(UVLO)機能といった診断機能/保護機能を備えています。サーマル・シャットダウンや UVLOが発生した場合、各ドライバIC はディスエーブルの状態に移行して損傷の発生を防ぎます。また、これらのIC は、1つの外部アナログ入力による測定、ドライバの温度の評価、モータの温度の推定を行う機能も内蔵しています。

TMC2240TMC5240は、集積度が高く、エネルギー効率に優れ、フォーム・ファクタが小さい製品です。そのため、これらの製品を採用すれば、サイズが小さく拡張性の高いシステムを構築できます。つまり、費用対効果の高いソリューションを実現可能だということです。例えば、電流検出機能を内蔵しているので、かさばる外付けの電流センス抵抗は不要です。また、両ICは完全なソリューションなので、クラス最高レベルの性能が得られるだけでなく、それぞれのIC を使いこなすために必要な学習時間を最小限に抑えられます。

TMC2240/TMC5240は、医療用機器、研究用機器、FA 機器、 CCTV、セキュリティ機器、3Dプリンタなどのアプリケーションに最適な製品です。

バイポーラ型のステッピング・モータに最適な高電圧対応のドライバと

モーション・コントローラ

TMC2160」はバイポーラ型のステッピング・モータに最適な高電圧対応のドライバICです。一方、「TMC5160」には、 TMC2160と同様のドライバ機能に加え、モーション・コントローラ機能も統合されています。両ICは、出力の大きい2 相ステッピング・モータの駆動に用いるドライバ機能を提供します。シリアル通信インターフェースとしてはS/DSPIUAR Tをサポートしています。また、256 マイクロステップの分解能を備えると共に、MicroPlyerによるマイクロステップの補間機能も提供します。これらのIC では、CoolStepStealthChop2StallGuard2SpreadCycleといったADI  Trinamicの技術を利用することで、ドライバの性能が最適化されています。 TMC5160cDriver  ICであり、SixPointTM ランプ機能を使用するモーション・コントローラも内蔵しています。このIC を採用すれば、位置決めの高速化を図ると共に、台形ランプによって生じる共振を軽減することが可能になります。

ICはパワーFET を内蔵していません。パワーFET は、大電流や高電圧の仕様に応じて柔軟に選択することになります。高い汎用性が得られるので、バッテリ駆動のシステムから高電圧の産業用システムまで、広範なアプリケーションに対応できます。

TMC2160TMC5160は、CCTV やセキュリティ機器、FA機器に最適な製品です。医療、繊維、ロボット、産業といった分野で使用するモータ・ドライブにも適用できます。

2 相ステッピング・モータに最適な低電圧対応のドライバIC

TMC2300」は、低電圧に対応するステッピング・モータ用ドライバICです。バッテリ駆動の2 相ステッピング・モータをターゲットとして設計されています。256 マイクロステップの分解能に対応するだけでなく、CoolStepStealthChop2StallGuard4SpreadCycle をベースとする機能も提供します。 StealthChop2を利用すれば、携帯用、家庭用、オフィス用のアプリケーションに適した静音性に優れるモーション・コントロールを実現できます。

TMC2300 では、S/Dインターフェースを利用することで、最大 256 のマイクロステップを実現可能です。高度な構成を行いたい場合に向けて、オプションでUART のインターフェースも提供されています。出力段の効率が高く、スタンバイ電流がわずか0.03 μA に抑えられているので、長いバッテリ寿命を保証できます。このドライバと共に、2 個の単3 電池または1個のリチウム・イオン・バッテリを使用した場合、通常はバッテリの電圧が2.0Vまで下がっても動作を継続させられます。

TMC23003mm×3mm の小型パッケージを採用しています。

1.2Arms の電流を供給できるので、IoTInternet of Things)機器、ハンドヘルド機器、バッテリ駆動の機器、モバイル型の医療用機器に最適です。

まとめ

ステッピングモータ駆動技術は、モーションコントロールの分野において重要な役割を果たしています。フルステップやハーフステップモードから、高度なマイクロステッピング技術に至るまで、この技術は、高精度、低騒音、高効率を求めるさまざまな産業のニーズに応えるだけでなく、工業生産、医療機器、ロボット工学の分野においても幅広い応用が期待されています。

ADIのマイクロステッピングソリューションは、Trinamicのモーションコントロールの中核技術です。高度な駆動技術によりステッピングモータの性能を向上させ、高精細な位置決めと滑らかな動作を実現します。

参考資料

1 George Beauchemin「Microstepping Myths(マイクロステッピングの神話)」Machine Design 75、No. 19、2003 年10 月

出典

1Analog Devices Inc.
https://www.analog.com/en/resources/analog-dialogue/articles/masteringprecision-understanding-microstepping.html


著者について

Cindy Changは、アナログ・デバイセズのアプリケーション・エンジニアです。2022 7 月に入社しました。現在はセントラル・アプリケーション・グループに所属。カリフォルニア大学ロサンゼルス校で電気工学の学士号を取得しています。Tea Tranは、アナログ・デバイセズのアプリケーション・エンジニアです。2022 7 月に入社しました。現在はセントラル・アプリケーション・グループに所属。カリフォルニア・ポリテクニック州立大学サンルイスオビスポ校で電気工学の学士号を取得しています。