もうすぐ到来?トイレで健康管理する時代

私たちは毎日、健康に関する貴重な情報をトイレに流しています。排泄物を検査すると聞くと、不快感を抱くかもしれませんが、実はこの検査から、感染症、特定の癌、糖尿病など、さまざまな疾病に関する情報が得られるのです。新型コロナウィルスの流行時には、科学者たちは廃水中のウィルスを調査し、ウィルス量と発生源を調べることで、感染拡大を監視していました。
もはや付加機能ではない
先進的なトイレには、便の硬さや尿の流れを監視できるカメラなど、排泄物のサンプリング装置が搭載されています。未来のトイレでは、便の検体を採取して処理することも可能になるかもしれません。自宅での検体採取を自動化すれば、定期検診がより受けやすくなります。また自動化することで、患者の手を煩わすことなく、定期的に健康データが医療担当者に提供され、長期間にわたる患者の監視業務が簡素化されることになります。
食物アレルギーや食物過敏症の患者は、食事日誌を活用することで、スマートトイレから症状を引き起こす食物について詳細な情報を得ることができます。過敏性腸症候群(IBS)の患者の多くは、発作の原因を突き止めるために食事日誌をつけています。もしアプリ上で食事日誌をつけ、トイレがそのデータを参照できれば、摂取物と排泄物とを比較することで、患者がどの食物にどんな反応を起こすのかについての重要な情報が得られます。データが十分蓄積されれば、症状を引き起こす可能性のある食物を予測することもできるようになるでしょう。
継続的な健康モニタリングは、健康やフィットネス志向の高い人々の間では大きなトレンドになっています。ランニングやサイクリングの愛好家たちのコミュニティでは、スマート機器で追跡しなかったアクティビティはカウントされない、という有名なジョークがあります。ランニングやサイクリングのたびにシェアしたがる人たちは、トイレでのアクティビティや排泄記録についてもフォロワーから「いいね!」を求めるようになるのかもしれません。
トイレをスマート化するには?
スマートトイレに搭載された機械学習アルゴリズムは、ユーザーのプロファイルを構築して各ユーザーの標準的な行動パターンを学習し、それからの逸脱があれば、本人に警告を与えるべき逸脱であるかを判断します。機械学習アルゴリズムとあわせて、従来の尿検査試験紙がすぐに確実な結果を出します。
尿検査試験紙には、pH、グルコース、タンパク質、ケトン体、血液などの濃度に応じて色が変化する試薬が含まれています。複数の試薬を含む尿検査試験紙は市販されており、1枚の試験紙で10種類以上の検査ができます。光学センサが複数の試験紙の検査結果の色を解釈することにより、スマートトイレは尿からさまざまな健康指標を迅速に収集することが可能になります。これによりユーザーは、尿路感染症(UTI)、糖尿病、腎臓疾患、妊娠を早期に発見ことができます。
メンテナンスを考慮すると設計上の課題も見えてきます。スマートトイレが故障したら、ユーザーは配管工を呼べばいいのか、それともIT技術者を呼べばいいのでしょうか。メーカー側もカスタマーサポートや訓練を受けた技術者、交換部品を用意しておく必要があります。トイレ周りには余分なコンセントがないことが多いので、設置には電気工事が必要になるかもしれません。
スマートトイレ導入の課題
スマートトイレを運用する上での重要なステップは、利用者を識別することです。この課題に対するスタンフォード大学の研究者たちの解決策は、名案とはいえ、困惑させられるものでした。「尻」紋をスキャナーに取り込んで利用者を識別するというのです。これ以上の説明は差し控えたいと思います。
つまり、スマートトイレの最大の課題のひとつは、技術的なことよりも社会的なことなのです。人は最も個人的なデータが分析されることに抵抗を感じます。いわゆる「キモい」要素が、導入を阻む第1の障壁となっているのです。
今後、データプライバシーは、これまで以上に重要になります。スマートトイレが収集する情報は、医療提供者に共有されるため、医療情報として保護されます。スマートトイレのユーザーにとって最もありがたくないのは、個人データの漏洩や、自分のトイレ習慣に基づくターゲット広告です。スマートトイレのワイヤレス送信機から接続先のデータベースへデータを送信する際には、情報は暗号化されている必要があります。
また、人々の排泄物を継続的に監視することにも倫理的な懸念があります。スマートトイレは、アルコールや処方薬、違法薬物など、個人が秘密にしておきたい摂取物まで検出してしまいます。スマートトイレのある家に招かれたら、スマート機能を解除し、従来のトイレに変える方法はあるのでしょうか。
最後に、トイレに搭載された精密な電子機器は、最適な性能を維持するために、常に調整を行い、清潔な状態を保つ必要があります。トイレは過酷な環境であると考えられるので、電気接続部や部品を密閉し、湿気から保護する必要があります。また、トイレは無菌ではないため、汚染検査をしても偽陽性になる可能性があります。
まとめ
排泄物について考えるのは気持ちのいいことではないかもしれませんが、貴重な健康情報をトイレに流してしまうのは、実はもったいないことなのです。スマートトイレは医療診断と健康指標に新たな可能性をもたらすはずですが、その導入への最大の壁となるのが、極めて個人的な情報を分析されることについてユーザーからの同意を得ることです。
高度な健康指標を提供するスマートトイレについてさらに詳しくは、マウザーの関連記事をご覧ください。