APEC2024トレンド:持続可能な電力ソリューションを解き明かす

2月25日から29日までカリフォルニア州ロングビーチでAPEC2024会議が開催された。昨年は、電力設計をテーマに窒化ガリウム(GaN)が多く用いられた。今年は、サステナビリティに重点を置き、今日のほとんどの設計の中心であるより効率的な電力利用に焦点があてられる。この会議では、以下のような疑問が探求される。
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電力変換テクノロジーの進歩は、サステナビリティにどのように積極的に貢献しているのか?
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ワイドバンドギャップ半導体(WBG)デバイスは、エネルギー損失を低減し、システム性能を向上させる、より効率的な電力変換器をどのように実現させるのか?
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電力変換効率を向上させることによる環境上の利点は何か。また、これは世界的なサステナビリティの目標とどのように関連しているのか。
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すべての電力システムをより効率化し、地球資源への悪影響を減少させるにはどうすればいいのか?
サステナビリティの動向
会議の参加者は、電動化(化石燃料をベースとする技術を電気をベースとする代替技術に置き換えること)に焦点を当てたトレンドを数多く目にする。このトレンドの最も代表的な例といえる電気自動車から始まり、ワイドバンドギャップ半導体に注目する。ワイドバンドギャップ半導体は、シリコンベースのチップへの依存を低減し、低コストと高効率を実現。さらに複数のインフラケーブルを排除する有線ネットワークを介して電力とデータラインを統合することができる。例えば、パワー・オーバー・イーサネット(PoE)は、電力とデータを同時に伝送し、通信コストを削減する。
現在、テクノロジーの議論があれば、必ず人工知能(AI)や機械学習(ML)についての解説があるものだ。今年の会議では、ハードウェアがAIをサポートするために何が必要なのか、必要な電力の供給などについて豊富な情報を得ることができる。さらに、小型化とそれによる損失への影響、および半導体材料の物理的特性も展示される。
ワイドバンドギャップ半導体(WBG)の分野では、窒化ガリウム(GaN)や炭化ケイ素(SiC)といった材料が、高効率、高速スイッチング、高温・高電圧での動作能力といった優れた性能を実現し、パワー電子機器の小型化、高効率化を可能にしている。
パワーエレクトロニクスの分野は、テクノロジーの進歩や新たなアプリケーションの登場によって絶えず進化している。パワーエレクトロニクスが進化すれば、エネルギー貯蔵、医療機器、IoT、デバイスの小型化の進歩、再生可能エネルギーの統合、グリッド統合の改善など、幅広い用途でその成果が見られるようになる。APEC2024を通じて、温室効果ガスの排出を削減し、持続可能な活動を促進する輸送・環境テクノロジーが主な特徴となる。
APEC2024テクニカルプログラムは、論文、プレゼンテーション、セミナーなど、豊富で洞察力に満ちた内容となっている。こちらから。
グローバル・サステナビリティに関しての目標
2015年、国連(UN)の全193カ国は「2030年度の持続可能な開発アジェンダ」を作成し、 17の持続可能な開発目標 (SDGs)を策定した。テクノロジーに特化した目標には、以下のようなものがある。
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清潔な水と公衆衛生
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安価でクリーンなエネルギー
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働きがいと経済成長
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産業、イノベーション、インフラストラクチャー
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持続可能な都市とコミュニティ
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責任ある消費と生産
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気候変動対策
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目標のためのパートナーシップ
これらの目標達成に積極的に貢献するテクノロジー・ソリューションは、APEC2024の会場でも、それ以外の場でも今後も大きな反響を呼ぶだろう。まだまだやるべきことは多いが、この8つの目標は、すべてのテクノロジー、特にパワーエレクトロニクスに引き続き焦点を当て、新しい設計と開発によって持続可能な電力ソリューションを実現させることを意味している。これらの目標の原動力となる活動は、今年発表されたセミナー、講演、会議論文など様々な場所で行われるだろう。
注目すべきセッション
毎年、APEC参加者にとってのハイライトの一つは、 本会議(メインセッション:Plenary Sessions)である。これらのセッションでは、先見性のあるリーダーたちが、パワーエレクトロニクスのエンジニアが直面している現在と未来の問題について講演する。ここでは、活発な質疑応答が期待できる3つのプレゼンテーションを紹介する。
Power Integrations社の会長兼CEOであるBalu Balakrishnan氏が、 サステナビリティと収益性のためのイノベーションをテーマにセッションを行う。彼は、基本的なマイクロエレクトロニクスの革新と、脱炭素化とエネルギーのサステナビリティの鍵となる電力コンバータのトポロジーと実装の開発について説明する。さらに、イノベーションがビジネスだけでなくいかに環境に貢献するかについても触れる。
Wolfspeed社のCEOであるGregg Lowe氏は、 炭化ケイ素に関する技術の進歩について、過去の振り返りからこれからについて講演する。Lowe氏は、電気自動車(EV)において今日最も顕著な、パワーエレクトロニクスの中心的存在である炭化ケイ素(SiC)テクノロジーの変化の過程を振り返る。また、パワーエレクトロニクスにおける炭化ケイ素の将来と、さまざまな用途における持続可能で効率的な電力ソリューションを推進する可能性についての洞察も解説する。
Intel社の企業戦略・ベンチャー担当ディレクターであるFrancesco Carobolante氏からは、これからのAIに必要なプロセッサ内部の効率的な電力供給について講演する。集積電圧レギュレータ(IVR)の開発は過去20年間にわたり、今日ほど重要性をもっておらず、いかに注目されていなかったかについて論じる。AIプロセッサの電流は1,000Aに近づきつつあり、ヘテロジニアスインテグレーションによって、パッケージ内にさまざまな負荷がかかるようになっている。彼のセッションでは、次世代の社会的・経済的変革を支える持続可能な先進コンピューティングのビジョンを達成するために、エネルギー効率がいかに重要であるかを強調する。
今後の期待
APEC2024は、参加者全員にイノベーション、洞察、つながりを感じる環境を提供するエキサイティングなイベントであることは間違いない。高効率かつ信頼性の高い先進的なパワーエレクトロニクス・ソリューションに対する需要は拡大し続けている。この会議は、教育、ネットワーキングの機会、持続可能な未来を形成する上で極めて重要な役割を果たすトレンドや技術に関する見解を提供し、今後も不可欠なものとなる。