Skip to main content

自律型ロボットにおけるセンサの役割

 

これまで長い間、ロボットはSFの題材として取り上げられてきました。初期のサイレント映画の歴史的名作から、米国のSF作家アイザック・アシモフの「考えるロボット」にいたるまで、ロボットは人間の形をした機械として描かれてきました。そこに登場する架空のロボットたちは、人間を遥かに超える知能を持っているのですが、マイクロエレクトロニクスや半導体、トランジスタが登場する以前の時代から、そんなロボットがすでに想像されていたとは、驚くべきことだと思います。

ロボットが現実の世界で役立つことにいち早く気づいたのは、製造業でした。しかし、実際にロボットが登場すると、想像していたものとはまったく違っていました。空想世界のロボットのように洗練されていないだけではなく、そもそも人間のように見えないのです。この第一世代のロボットは知能を持たず、ただ限られた機能をすばやく正確に実行するよう設計されていました。手間のかかる反復作業は機械にやらせることで、工場の効率を高め、生産物の品質を向上させることができます。このような作業には人間の形は必要なく、なんの利点もありません。

この記事では産業用ロボットにおけるセンサの役割と、スマートな意思決定を可能にするデータ収集・分析にセンサがどのように貢献しているのかについて考察します。センサの精度や消費電力、コストに関する課題をいくつか取り上げたいと思います。

 

自律型ロボット

 

ロボット工学は、最初の産業機械が登場して以来、進化を続けています。幅広い領域にわたるさまざまなテクノロジーが同時に成熟し、自律走行搬送ロボット(AMR)と呼ばれる新世代のデバイスが誕生しました。そしてこのAMRの心臓部となるのが最新のマイクロエレクトロニクスの処理能力です。ただし、ワイヤレス接続、バッテリ、モーターなどのテクノロジー分野の進歩がなければ、AMRは何もできません。

AMRは自己認識を持たず、真の人工知能を採用していませんが、周囲の環境を理解するように設計されています。センサやその他の入力を通じてこの情報を集め、応答し、与えられたタスクを達成するために行動を適応させます。機械学習と呼ばれる人工知能を活用して、雑然とした工場内を動き回ることから、精密貨物の取り扱いまで、自律的に行動することができるのです。

SFからロボットの新たな用途が生まれたように、現実世界では、最新世代のAMRがさまざまな産業で応用されています。科学研究、災害救助、宇宙空間などの危険な現場にロボットを配備し、人間が行うには危険な作業を代行させることに大きな関心が寄せられています。自律型ロボットは幅広い用途に活用できる可能性を秘めていますが、AMRはすでに産業界に大きな影響を与えています。

 

スマート工場からその外へ

 

AMRによって、人間が活動する必要がないため暗闇の中で稼働できる「消灯工場」が実現します。このような暗闇の工場の中で、AMRは生産ラインと一体となり、工場内で原材料を運搬する役割を担います。AMRは自立しているため、時々刻々と変化する複雑な環境の中で最適な経路を計算し、最新の要求にも対応することができます。生産スケジュールに変更があっても、その情報は自動的に配送ロボットに伝達され、正しい部品を正しい時間に正しい場所に届けることができます。

工場の外では、配送業界の大手企業による開発に大きな関心が集まっています。AMRは、配送プロセスの最終段階として、顧客の玄関先まで荷物を届けるための理想的なソリューションであると期待されています。この用途では、AMRは街の歩道を移動し、目的地に到着します。設計者にとっての課題は、都市部での予測不能な交通量に安全に対応できるロボットを開発することです。

自律型ロボットは空も飛んでいます。ドローンなどの無人航空機(UAV)は、少し前から身近なものになりましたが、通常はリモコンが必要になります。しかし、最新世代の自律型UAVは、さまざまな用途で「空からの目」として活用されています。長時間滞空して、広い範囲を隈なく探索し、異常を特定する能力を持つことから、非常に有効な手段となっています。例えば、精密農業の現場の多くは、自律型UAVを採用して、上空から作物の状態監視を行っています。これらのUAVは、赤外線などの特殊なビジョンシステムを搭載しており、懸念される領域を特定し、人の手を借りずに肥料や農薬を散布することも可能です。

 

さまざまなセンサ

 

こうした用途では、ロボットによる環境への反応が成功の鍵を握ります。センサは自律型ロボットの単なる目や耳となる以上に、重要な役割を担っています。

 

固有感覚センサ

 

AMRが環境を移動するには、その前に自分の状態を検知できていなければなりません。固有感覚センサは、ジャイロセンサ、傾斜センサ、加速度センサ、温度計など、ロボット自身の姿勢、動き、温度をモニターするためのセンサです。また、物流に携わるロボットには特に重要な圧力センサや重量センサもよく併用されます(例えば、積み荷の荷重により危険な状態が生じないようにするなど)。

AMRの多くは、電動モーターの電源にバッテリパックを使用しており、現在の技術ではリチウムイオン(Li-ion)電池が採用されています。リチウムイオン電池は、その高いエネルギー容量と再充電特性から、さまざまな産業分野で広く使われていますが、安全性には懸念があります。リチウムイオン電池が破損したり、誤った充電をしたりすると、熱暴走と呼ばれる非常に危険な事象が発生する可能性があります。熱暴走の危険性を防ぐためにパワーパックの状態を監視するバッテリマネジメントシステムには、正確な温度検知が極めて重要になります。

これらのセンサは、ロボットのメンテナンスにおいても興味深い役割を担っています。ロボットのパフォーマンスや部品を長期間にわたって監視できるため、ロボットの状態について貴重な知見を得ることができます。例えば、温度が安定して上昇すればモーターの消耗を知らせることができますし、動作中に傾斜角度が変化すればシャーシが損傷している可能性があります。このようなデータを収集・分析することで、オペレーターは事前に計画的なメンテナンスを行い、ダウンタイムを最小限に抑え、完全稼働を維持することができます。

 

パッシブセンサとアクティブセンサ

 

ロボットが移動し、動作する環境を検知するには、アクティブセンサとパッシブセンサを採用することができます。パッシブセンサは、環境そのものから発生するエネルギーを検出します。これには、可視光線や赤外線などのさまざまな電磁エネルギーや、音や気圧などの物理的条件も含まれます。パッシブセンサはこれらの情報を収集し、ロボットがその情報を使用して周囲状況のモデルを作成します。

AMRのパッシブセンサには、ロボットが危険な場所に立ち入るのを防ぐ温度センサや圧力センサ、ビジョンシステムなどがあります。ビジョンシステムとは、可視光線や赤外線を使って外部環境から情報を取得するカメラを組み合わせたものです。最新の組み込みコンピューターで処理すると、非常に正確な環境の視覚モデルを作成でき、ロボットは障害物や危険を避けて安全に移動することができます。

アクティブセンサは、エネルギーを生成し、それを周囲に放出することで動作します。このセンサは、このエネルギーが周囲の環境とどのように相互作用するかについての情報を収集します。最も身近なアクティブセンサの応用例はレーダーで、無線周波数(RF)放射のパルスを送信し、その反射を測定します。パルスがターゲットに到達して戻ってくるまでの時間から、距離を正確に測定することができます。

AMRは、周囲モデルをさらに強化するために、さまざまなアクティブセンサを使用します。光検出と測距(LiDAR)またはレーザーは、レーダーに代わり、RF伝送を光に置き換えて対象物を検出します。光センサは、埃や霧などの大気条件の影響を受けることがありますが、レーダーよりも高い解像度を実現します。

 

世界を検知する

 

どのセンサ技術を採用しても、ロボットはSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)と呼ばれる手法を使います。SLAMとは、自律型ロボットや車両が、エリアの環境地図の作成と、地図上の自分の位置推定を同時に行う技術です。SLAM技術は、複数のセンサから得られる情報をもとに、経路計画や障害物回避などのタスクを実行するために必要な情報をロボットに提供します。

さらに重要なのは、公共安全におけるセンサの役割です。AMRは街中や工場で見慣れた存在になるにつれ、監視なしで行わなければならない重要なタスクを任されるようになります。ロボットを公共空間や人と接する可能性のある場所に配置するには、アクティブセンサとパッシブセンサが共に重要な役割を果たすことになるでしょう。

 

まとめ

 

センサは、ロボットが周囲の環境を認識し理解する上で目や耳以上の役割を果たします。AMRは自己認識こそできませんが、周囲の環境に反応し、行動を適応させ、与えられたタスクをこなすように設計されています。30分以内にピザを配達するロボットでも、最も複雑な捜索救助ロボットでも、AMRに搭載されたさまざまなセンサによって、その潜在能力を最大限に発揮することができます。これらのセンサは、ロボット自身の状態の検出、バッテリの状態の監視、メンテナンスなど、重要な役割を果たすため、ロボット開発の成功には不可欠です。