センチメートル精度の測位・追跡を可能にするUWB通信とは?
UWBを他の無線通信・位置測位技術と比較する
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(画像:Сake78 (3D & photo) - stock.adobe.com)
UWB (超広帯域無線通信) が、最近 (2019年) 、またさらに進化しました。今回は、距離・領域・位置の検出技術が大幅に強化され、通信性能も向上しています。生活に溶け込んだ他の無線通信技術や検出技術と肩を並べるまでになりました。UWBは他の技術とどう異なっているのか、比較してみたいと思います。
UWBとは?
超広帯域無線通信 (UWB) は、IEEE 802.15.4aおよび 802.15.4z をベースに、高精度位置情報サービスと安全通信に特化して設計されています。UWBの基本的な動作は、他の無線通信技術や検出技術とまったく異なっています。UWBは、広帯域でありながら、立ち上がり、立ち下がりが急峻な短時間のパルス (2ナノ秒以下) を利用しています。UWBシンボルごとに 2つの連続したインパルス無線 (IR) 信号を使用して、パルス内のデータをエンコードします。
UWB は、二位相偏移変調 (BPSK) やバースト位置変調 (BPM) を使用します。UWB通信にはタイムスタンプが付けられ、このタイムホッピングコードを使用することにより、非常に正確な位置検出と他の UWB信号からの干渉耐性が実現します。また、タイムスタンプを使用することで、2つのUWBデバイス間の飛行時間 (ToF:Time of Flight) の測定が可能になり、2つのUWB無線間でポイントツーポイント (P2P) の双方向測距 (TWR) が可能になります。環境に同期された「アンカー」を追加することにより、到着時間差 (TDoA) または逆TDoA (RTDoA) を使用し、環境内でリアルタイム ナビゲーションが可能になります。
米国FCC (連邦通信委員会) の定義によれば、UWBとは500MHz以上の絶対帯域幅を使用する無線通信を指します。また、UWBは中心周波数の最大電力密度が2.5 GHz 以上、または2.5 GHz 以下の中心周波数で0.2以上の分数帯域幅を持ちます。これにより、Wi-Fi®やBluetooth®など、2.G帯のISMバンドとの干渉を防ぐことができます。
図1から、UWBの搬送波周波数と帯域幅は、通常、世界中で3.5GHzから9.5GHzの範囲であることがわかります。一部のUWBチャネルでは、9484.8MHzの搬送波周波数で 1354.97MHzという高い帯域幅が可能です。これは通信技術としては非常に広い帯域幅ですが、UWBはタイムパルス方式を採用しているため、スループットは27Mbpsに制限されます。
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図1:UWB チャネルと世界各地の利用状況 (出典:Qorvo)
UWBとその他の無線通信
UWBは、通信と位置検出に対してまったく異なるアプローチで構築されています。基本的にUWBは、レーダーのような位置検出規格によって通信を実現するための一時しのぎの方法のように見えますが、このアプローチによりさまざまな重要な利点があります(図2)。
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図2:UWBをBluetooth、Wi-Fi、RFID、GPSと比較 (出典:Qorvo)
まず、UWBは、GPSや、Bluetooth、Zigbee、RFIDなどの非独占的な無線通信規格よりもはるかに高速なスループットを持っています。機能的に、生のスループット性能で UWB に優る規格は、Wi-Fi と 4G/5G セルラー通信だけです。ただし、Wi-Fiも4G/5G も精密な位置検出機能を備えていません (最大精度数メートル) 。RFIDは、「理論上は」、絶対位置精度において UWBに次いで優れていますが、RFIDの最小検出範囲は最大1メートル以下です。ハイエンドユーザーのGPS精度 (数センチメートル) でも、P2P位置検出精度はUWBより劣っています。ただし、長期的な静止 状態における追跡では、GPSの精度はミリメートルレベルの測定値に達する可能性があります。この場合、高精度なGPSは、軌道上の衛星群から情報を受信するため、干渉が抑えられた静かな環境でなければ厳密には利用できません。
信頼性と耐干渉性にもUWBは優れています。比較的狭帯域なGPS信号は、ユーザー機器に到達するときには微弱になるため、GPSは障害物や干渉の影響を非常に受けやすくなります。これに対して、RFIDは、かなり堅牢な近距離での共振メカニズムを採用しているため、比較的堅牢です。Wi-Fi、Bluetooth、Zigbeeは、干渉やマルチパスの影響を受けやすいですが、障害物にはある程度耐性があります。UWBは極めて広帯域な動作とタイミング方式により、一般的な干渉だけでなく、マルチパスに対しても強力な耐性を持ちます。ただし、RF信号の透過を妨げる障害物は、UWBやその他の無線通信・検出技術の障害となります。
GPSの追跡範囲は、他の位置検出衛星も入れれば、事実上グローバルです。RFIDの範囲は非常に狭く、せいぜい数メートルです。Wi-Fiは通常、5mの精度でおよそ100m、最大でも150mの範囲です。それに対してBluetoothは、約25mで約2mの精度を実現し、最大100mまで到達します。さらにUWBは、センチメートル単位の2点間距離精度を維持したまま、アンカーを使用して最大250mの範囲に対応します。
Wi-FiもBluetoothも、XYZ位置を検出し、位置を測位するのに数秒かかります。RFIDは通常1秒以内で位置測位できます。GPSの位置測位時間は、通常約100ミリ秒です。UWBプロトコルは、1ミリ秒以内で完全なXYZ位置測位ができるため、ピア間またはアンカーを設置した空間で高速追跡が可能になります。
ほとんどの無線プロトコルは、長期間バッテリ動作させるため、電力効率の高い何らかの動作モードを備えています。GPSの場合、注意すべきことは端末のバッテリー寿命だけです。とはいえ、GPS信号を検出するのに必要な高ゲイン、低ノイズのアンプが原因で、効率は他の無線規格よりも一般に低くなります。Wi-FiとBluetoothの低電力モードでは、送信 (TX) と受信 (RX) に10nJ/bit以上の電力が必要です。UWBではRX/TXが10nJ/bit 以下になり、BluetoothやWi-Fiに比べて 効率が大幅に向上します。RFIDセンサは、一般にタグ側はパッシブですが、端末側は電源が必要で、通常は外部電力が使われます。
ユーザー機器や携帯機器向けに開発されたUWBアンカーやUWBモジュールは、Bluetoothモジュールと同様、比較的コストがかかりません。これらのモジュールは、一般にWi-FiやGPS モジュールよりもはるかに安価です。RFIDモジュールに関しては、タグの配置方法によって相対費用の幅が大きく、基本的な使い捨てユニットなら比較的安価ですが、高度なユニットは高価になることがあります。
UWBは比較的新しいプロトコルであり、UWBのセキュリティを侵害しようとする試みがまだあまり行われていないため、セキュリティは比較するのが難しい領域です。既にセキュリティ上の脆弱性が知られている既存の無線プロトコルとの比較については、時が経てば明らかになることでしょう。同様に、導入されたUWBシステムの実際の拡張性についても、Bluetooth、Wi-Fi、Zigbeeのように十分テストされているわけではありません。ただし、理論上、UWBは密度の高い環境に何万ものタグを展開できる可能性を秘めており、これはBluetooth、Wi-Fi、Zigbeeの実用限界をはるかに超えることになります。
まとめ
UWBがBluetooth、Wi-Fi、Zigbee、GPS、RFIDなどの既存技術に置き換わることはなさそうですが、そもそもそれはこの技術の目的ではありません。UWBは、より低いレイテンシと高い信頼性を備え、より高精度な位置検出を行うアプリケーションを対象にしているようです。ですからUWBは、むしろ5Gの「超信頼・低遅延 (URLLC) 」機能と競合しているように思われます。ただし、5Gは、UWBと同じ精度で位置追跡・測位 (ミリ波技術では1m以下程度) を行うことはできません。UWBは、優れたスループット技術により、短距離や比較的長距離において高精度なP2P測位・追跡アプリケーションを実現します。これはユニークな技術であり、他にもさまざまなアプリケーションを実現する可能性を秘めています。